『イノベーション・エコシステムと新成長戦略』 齋藤茂樹著 (丸善出版)
次世代日本の成長戦略の柱になるべきは,ニュービジネスの企業群とそのニュービジネスを創っていく主体になれる大手企業とベンチャー企業である.このニュービジネスの一つひとつを木にたとえると,それらの木が森というクラスターを形成するようにつくりあげ,さらに森の中からまた新しい若い木が次々と新しい成長サイクルをつくっていくような生態系システム,すなわちエコシステムをつくりあげることこそが日本の,あるいはグローバル経済における共通の成長戦略である.本書では,この日本の成長戦略を考えるために,経済成長を引き起こすイノベーションとはどういう仕組みであるべきか,さらには自律発展的なエコシステムをどうつくりあげていくべきか,について具体的に議論を展開していく.
「刊行によせて」 (日本ベンチャー学会前会長 一橋大学教授 伊藤邦雄)
本書の著者の齋藤茂樹さんは,こうした問題を熟知し,かつ私と同じ問題意識を共有してきた豊かな将来性をもった若きベンチャーキャピタリストです.齋藤茂樹さんは,アメリカのMIT で教育を受け,アメリカの起業家精神や資本主義の実態を目の当たりにしてきました.それをベースに日本に戻ってからのベンチャーキャピタリストしての経験に照らして,未来志向でわが国の羅針盤を提示したのが本書です.一緒に夢を追いかけ,この国を再び輝かせましょう
<目次>
第1 章 資本主義とイノベーション
現在の資本主義の停滞/財政政策と金融政策の限界/イノベーションこそ新しい価値の創出 /人口による成長と新事業による成長/資本主義をドライブするのは利潤の創造の力 /マルクスの利潤と資本家の変容/イノベーション―未来の先取りによる新しい価値/新しい余剰利潤と完全競争下における市場参入/資本主義の無限の価値回転運動のドライバー/情報化社会における価値の差異化/イノベーションの正体/イノベーションとインベンション/蒸気機関車か,大陸横断鉄道か? ?/ Google―サーチエンジン会社からポータル会社へ/ Google ―クラウドネットワークで情報網を支配する会社へ
第2 章 インベンションとイノベーションの発展段階
インベンションとイノベーション/リサーチ・基礎研究/デベロップメント段階による特定応用技術の商品化/商品を普及させるイノベーション・フェーズ/ハイテク・マーケティングの理論―ビジョナリー・ユーザーと一般大衆ユーザー/ビジョナリー・ユーザーと一般大衆ユーザーの間にあるキャズム/オンデマンドテレビにみるキャズムの事例/ハイテク・プロダクトの大衆化の罠/ゴリラ・セオリー/インクリプション・カーブ/ハイテク市場でのインクリプション的展開/デジタルコンテンツ流通のバリューチェーン/国によるデジタル・バリューチェーンの構造の違い/ベンチャー企業の発展段階とそれぞれの段階の特徴/ベンチャー企業の発展ステージ/シードベンチャーが注意しなければならないこと/シードベンチャー企業の資金調達の注意点/死の谷の段階でのベンチャー企業のチャレンジ/死の谷での復活戦/死の谷を超えたベンチャー企業の実例 /アーリーステージ・エクスパンション/大学発ベンチャーの経緯/ビジネスモデルの原型を固めるアーリーステージ/プライスモデルの設計の仕方/大企業とアーリーステージ・ベンチャー企業の提携・マッチング/レイターステージ/公開後グロース・ステージ/インクリプション・ポイントと公開するポイントについて/グローバル・マーケット時代の企業価値の拡大/大手金融グループによる公開会社の第2 成長のハンズオン支援
第3 章 大企業とベンチャー企業
大企業とベンチャー企業の関係/コーポレート・ベンチャーキャピタル/ Google のアンドロイドOS とクロームOS の両面戦略/シリコンバレー流大企業とベンチャーの共生システム/シリコンバレー企業の日本進出の方法/大企業のイノベーション・ジレンマとカーニハライゼーション/電気自動車開発でのカーニバライゼーション問題/通信会社のIP 化のカーニバライゼーション/アントレプレニュアーシップのある人材/大企業の経営者育成のあり方/制度経済学派と取引費用の考え方/どの市場の有力パートナーとつきあうか/日本の国内市場とアジアの成長市場
第4 章 リスクファイナンス・ビジネスのあり方
リスクファイナンスとは/イノベーションの担い手としての大手企業とベンチャー企業/アメリカのリスクファイナンス・ビジネス/日本のメインバンク・システム/リスクファインナス・ビジネスの展開/メインバンク・システムの変容/時価会計とベンチャーキャピタル会社の経営に対する影響/中小企業へのファンドの活用/ベンチャー・デット・ファンド/日本でのベンチャー・デット・ファンドの活用/現代におけるリスクファイナンス金融政策の必要性/ファンドの仕組み/ファンドの仕組みの解剖図/ファンド投資の資金源/ファンド投資の投資家たち/ベンチャーキャピタルのビジネスモデル/ベンチャーキャピタルの投資視点/プロダクトのコアと販売チャネル/資金調達力とベンチャーキャピタルの役割/ベンチャー経営者の経営力/借りることと直接投資を受ける違いと意味/外部投資を受けたベンチャー企業の管理体制/公開後の株価の上がるビジネスモデル/製造業の新しいビジネスモデル/高株価のための株主政策/公開した中小型成長株式のハンズオン投資への着手/グローバル投資家を対象に/ベンチャーキャピタリスとは/シリコンバレーのベンチャーキャピタルの存在感/ベンチャーキャピタリストの資質/ベンチャーキャピタリストはベンチャー経営の整体師? /事業会社パートナーと主幹事ベンチャーキャピタル/優先株式の利用による経営株主のガバナンス維持/ベンチャーキャピタルとバイアウトの違い/成功体験と失敗を潜り抜ける経験/ベンチャーキャピタリストのインセンティブの設計/イノベーション・エコシステム
第5 章 イノベーション・マーケット
クラスターとしてのイノベーション・マーケット/コンピューター&コミュニケーション革命/通信システムのデジタル化とIP化/放送とインターネットの統合の新しい変化/インターネットが起こした変革/現在のネットの新局面/現在のスマートフォンが意味すること/ Google のスマートフォン戦略/イノベーション・マーケットのビジネスモデルのコントローラー/ベンチャー企業の社長は次のイノベーションのセンサー/次のイノベーション・マーケット/地球倹約型社会の資本主義メカニズムの組み入れ――エコビジネス,アグリ・食ビジネスの発展のニーズ/農業と食のビジネスでニュービジネスクラスターを/ TPP のフレームで戦える農業ベンチャー企業を/日本の食ビジネスをグローバル市場に/ベンチャー企業経営者による新時代の啓示
第6 章 グローバルマーケットをもう一度考える
インターネットによるグローバル市民化/日本人の内向き指向化 /幕末と現在の日本の共通点/ヨーロッパの歴史からの教訓/グローバル戦略のアプローチ/ネットでのグローバルアプローチ/中国へのマーケットインのアプローチ/現地国のパートナーをどうつくるか/語学ができない言い訳からの決別/クールジャパン的アプローチ
第7 章 イノベーション・エコシステム創造への挑戦
ベンチャー企業はイノベーション・エコシステムに必要か/大企業は誰のもの/ベンチャー企業が大企業と競合できる産業構造を/ベンチャー企業へのリスクマネー供給システムとは/ベンチャー経営者出身のベンチャーキャピタリストの充実/ベンチャーキャピタリストが独立企業できる仕組みを/ベンチャーキャピタルへの資金の拡大のために/ファンド・オブ・ファンド型ベンチャーキャピタルの充実/ベンチャー企業への資金流入を生む金融政策を/大手金融グループの中小企業ファイナンスの見直し/投資信託でのベンチャーキャピタル・ファンドへの投資組み入れ
第8 章 アントレプレニュアーの生まれる社会
スローライフとアクティブに働くということ/ビジネス的にアクティブに働くという意味/アントレプレニュアーを生みだす教育/夢のある社会を
●For the the one of the pillars of a next Japanese economic growth, it is necessary to have seeds for new venture business entrepreneurs together with alliances with big companies. When you look at the “Growing System” , you will find that young woods (venture companies) appear as a small piece of the forest (industry) should be supported by the elder tree (big company) and by growth of these young trees will support other younger woods in turn and this kind of activities would result in creating growing cycle like ecology system in the industry.
I believe that this kind of relationship and circulation should be necessary for Japanese industry to consider on revival of Japanese economy, in other words, the total understanding of global economic growth. I tried to express my opinion in the scope of “How it should be schemed to create innovative way for economic growth” and “How it should be create ecological system valiantly”.
Send it to the publication (Kunio Itoh: Former Chairman of JASVE, Professor of Hitotsubashi Univ.)
The author of this book, Mr. Shigeki Saitoh, is a young venture capitalist who acknowledged with this kind of matter and shared same issues with me in the past.
He was educated at MIT and seen many US entrepreneurs and capitalism in front.
Based on that experience, together with his business career, he wrote this book for seeking to show the pathway for our future. I wish to try to find our tomorrow together and re shine this country again.