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メディカルテクノロジー・アドバイザー 花井 順一

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メディカルテクノロジー・アドバイザー 花井 順一

ハーバード大学医学部
Beth Israel Deaconess Medical Center (BIDMC) 腎臓内科
Interdisciplinary Medicine and Biotechnology (IMBIO)

1962年生まれ。1988年東京大学医学部医学科卒業後、東京大学医学部付属病院内科・放射線科、公立昭和病院救急医学科で、内科臨床・画像診断・救急医療を研修医として研鑽した後、1991年東京大学医学部付属病院第一内科へ入局。黒川清教授指導の下、腎臓内科を専攻し、東大病院での臨床業務(病棟/外来)・臨床教育・臨床研究に携わり内科臨床全般に幅広く専念する。1994年東大第一内科助手。1996年黒川教授の紹介で癌研究会癌研究所生化学部の嘱託研究員として宮園浩平部長(現東大医学部長)の下で基礎研究を始める。癌や組織繊維化など多くの病態に深く関わるTGF-β情報伝達系のシグナル伝達因子の同定、TGF-βシグナル伝達系のメカニズムの解明に携わり、世界レベルの研究に触発される中で、細胞生物学・シグナル伝達研究の基礎を学び、Nature, EMBO J, PNAS 等世界の一流誌での論文発表に至る。

黒川教授・宮園教授の紹介で、1999年ハーバード大学医学部 Beth Israel Deaconess Medical Center (BIDMC) 腎臓内科 (Division of Nephrology) へVikas P. Sukhatme教授 (現Chief of the Academic Officers: CAO)指導の下で留学。2000年医学博士学位取得。血管生物学の祖と言われる故Judah Folkman教授(Boston小児病院)に学生時代に薫陶を受けたSukhatme教授がBIDMCの腎臓内科主任教授として腫瘍血管新生の研究を始めた研究室に加わり、Folkman教授が発見した生体内で生成されるendostatin(血管新生阻害物質)の作用メカニズムの解明を課題として与えられた。

同僚の Ananth Karumanchi(現・腎臓内科教授)と endostatin 受容体の同定を行い、一方で発生学者 Sergei Sokol 教授との共同研究で Xenopus embryo の表現系を用いて、ensostatin が幹細胞や細胞の分化に重要な Wnt signaling を抑制することを発見しNature誌やFolkman教授の講演で特集される (JCB, JBC)。研究所スタッフとして採用され、Leonard Zon 教授との共同研究でzebrafishのvisualizeされた系で血管新生研究を続ける中で、clinical-oriented な研究の方向性と病態解明の基礎を学ぶ。この過程で、上皮細胞系に備わる分化システム epithelial mesenchymal transition (EMT)が、複数の病態に共通して重要な役割を果たしていることに気づき、以降、EMTの関わる様々な病態—-血管新生 (Nat Medicine, JCB)、組織繊維化 (Nat Medicine)、腫瘍転移 (JBC, Cancer Res)、創傷治癒、動脈硬化、血管石灰化、老化 (Aging)、癌幹細胞(Cell Death Diff)、脂質代謝、組織再生、薬剤性筋障害 (JCI)—-の解明に取り組み、その過程でInterdisciplinary Medicine and Biotechnology (IMBIO) というDivisionの創設に携わり、現在、腎臓内科と兼任で両divisionのfaculty を務める。

社会的なインパクトに至った仕事としては、以下のものがある。

1)preeclampsia(子癇)の病態解明と診断/予防法の構築

同僚のAnanth Karumanchiとともに進め (Nature Medicine, NEJM)、多くの製薬企業と共役し、アフリカを中心に世界の周産期医療における死亡率の低下に貢献しWHOから表彰。

2)抗高脂血症薬スタチンによる筋障害の病態解明

zebrafishを用いたシステムで解明し(JCI) 、生体における筋障害を可視化して病態解明に貢献したことで注目される。Harvard Focus・アメリカ一般誌にて特集。

3)癌治療として抗癌剤を使用せず、スタチンとACLY 拮抗薬の併用という、代謝拮抗薬だけで有効な抗腫瘍効果を示したLewis C. Cantley教授との共同研究 (JCP, Cell Death Diff)

癌遺伝子が作用する結果である、癌代謝を調節することで、治療効果を上げることができる具体例を示すことに成功し、現在臨床的な応用を含め注目されている。
4)代謝酵素LDH抑制が、癌幹細胞を抑制することに繋がる可能性を示したPier Paolo Pandolfi教授との共同研究(Cell Metabolism)

代謝的な変化が、癌細胞の分化を促し、癌幹細胞の誘導を抑制することを示した。癌細胞に至る癌誘導シグナルを抑制する従来の癌治療だけではなく、癌遺伝子が作用する結果(代謝・免疫)に注目し、その結果を制御することで、有益な治療効果を示すことに成功。

5) 慢性腎不全にEMTが関与している可能性を初めて示す(Nat Medicine)

この病態の有無に関しては病理学者との長い論争が続いたが、発生学者からの指摘、遺伝子改変マウスでのevidenceなどから、EMTの亜型としてpartial EMTが存在することが傍証として示された。慢性の腎臓疾患への治療の可能性を初めて提示している。

現在は、EMTが(癌)幹細胞を誘導するという大きな発見に基づき、治療抵抗性の癌の根幹と考えられている癌幹細胞の制御を目指し新規癌治療法の開発に取り組んでいる。また主要な共同研究として、Harvard School of Dental Medicineのグループとともに、慢性腎不全における老化の促進・動脈硬化・血管老化・石灰化などを阻止すること目指し、ミネラル代謝の変化に根ざす、老化、血管石灰化、骨・脂質代謝の動的な変化と背後に潜む細胞生物学的な制御機構など広い分野においての最先端テーマに取り組まれています。プロジェクトの一部は、Cell Metabolism 2017に発表されています。